レトロゲームレビュー/ブレス オブ ファイアV ドラゴンクォーター

BREATH OF FIRE V

DRAGON QUATER

 

 

機種

プレイステーション2

発売元

カプコン

ジャンル

ロールプレイング

発売日

02年11月14日

PlayStation2 the BEST版:03年7月3日

価格

6,800円

PlayStation2 the BEST版:3,000円

プロデューサー

竹下博信

サウンド

光田康典、崎元仁

テーマソング

鬼塚ちひろ:『castle・imitation』

国内売上本数

20万本以上

プレイ時間

60時間以上

 

 

世界に従うか 自分に従うか

 

 

グラフィック

太い輪郭線と独特のシェーディングにより、必要以上に画質が情けなく見える。

画質自体を評価したいが、これだけ暗くて見通しの悪い世界が続くのはキツイ。

ただ、息苦しさ、静寂や神秘的な雰囲気など、空気感の表現には長けていた。

 7

サウンド

陰鬱で起伏の乏しい曲と、繊細で神秘的な曲のギャップが際立っており、

閉ざされた世界という世界観がよく出ている。しかし、それだけに気持ちを

落ち着けられるような曲はほとんどなく、共同体の時くらいしか安心できない。

 7

システム

有利な状況を作って戦闘を仕掛けるPETS。場所移動や技の連携が運命を

別けるAPS。新たに掘り起こされたこれらの戦闘システムは、慣れる事さえ

難しいマニアックなもの。共同体はそれだけで遊べるほど。アイテム関連の

システムは厄介。SOLはハイリスクハイリターンで使いどころが難しいだろう。

 

操作性

普段時の移動は問題ないが、新システムに関わる、例えば戦闘前の操作や

戦闘時の操作は慣れるのが難しい。武器やアイテムの入れ替え操作も面倒。

 6

プラス要素

世界観やストーリーはとことん暗いことや。敵が恐ろしく強く、戦闘システムも

奥が深すぎることは、好き嫌いは激しく別けるだろう。反対に、SOLによる

マップやシナリオの追加や、共同体での活動は確実に楽しめる部分だ。

 7

外観評価点

 

36

プレイ感想

敵の攻撃を2回受ければもう瀕死に。こんな切羽詰ったRPGは初めてだった。

まずPETS(ポジショニング・エンカウンター・タクティクス・システム)を最大限に

活用し、出来るだけ有利な状態を作り出してから戦闘に突入する。そして

APS(アクティブ・ポイント・システム)に支配された戦闘では、後先を考えない

行動が即命取りとなるので、毎回細かい戦略を練る事が必要不可欠となる。

それでもどうしようもないときはSOL(シナリオ・オーバーレイ)を頼る事になる。

有り金をはたいてアイテムを目いっぱい袋に詰める。これが生き延びる秘訣だ。

世界観は暗く重苦しいし、それと同じように、選択を誤ったプレイヤーに対しては

一番初めからやり直し、という非常に厳しい洗礼が待っている。暇つぶし程度に

考えてプレイしようものなら、相当痛い目を見ることだろう。しかし、この難しさを

受け入れた上で挑戦しようというのなら、その手応えは確実に保証できる。

世界ではなく、自分に従ってプレイすると決心した者だけが実感できる境地だ。

 

内容評価点

 

37

総合評価点

 

73

コメント

前作の「うつろわざるもの」から約2年半、これまでの作風とは打って変わり、

果てしなく暗い世界を引っ提げて帰ってきたのが、今作「ドラゴンクォーター」だ。

新しい世界観に加え、サウンド面でも、古くは「クロノ・トリガー」から最近では

「ゼノサーガ」で有名な光田康典氏が音楽監督を、そして「伝説のオウガバトル」

や「ベイグラントストーリー」で有名な崎元仁氏が作曲を、そして鬼塚ちひろ氏が

テーマ曲をカバーしており、この豪華タッグにも目を引かれるところである。

 

 ただ、何を置いても注目して欲しいのは、今作のために新たに生み出された

システムであり、それを元に設定された非常ともいえる難易度の高さだ。

無限の戦略性を秘めているが、非常に難解なシステム、そして嫌になるほど

配置された超強力なディク(敵)達。RPG初心者ならずとも瀕死の場面を何度も

経験することになる厳しさ。そして最終手段のSOLを発動させることになる。

 

 今作はアクションタイトルを主戦力とするカプコン作品の中で、人気が続いて

いる唯一のRPGといっていい。カプコンの作品を見ると、ヒットしたタイトルは

比較的短い間隔で続編が発売され、3作目辺りで人気ががた落ちするという

傾向が強いが、その中で2〜3年という発売間隔を守り40万本前後の売上を

維持してきた今シリーズは、よほどカプコンにとって大切なタイトルなのだろう。

 

 21世紀を境に、Xboxの「鉄機」やGCへの「バイオシリーズ」独占供給など、

いくつもの大胆な挑戦を見せているカプコン。その想いは今作にも反映して

いたようにも思える。しかし今作はそんな挑戦的な作風が災いし、約20万本

というシリーズ史上最低の売上となってしまった。そして2005年、そろそろ

新作が発表されても良さそうな時期であるが、今のところ全く音沙汰がない。

 

我々はメーカーに対して“挑戦する気が全く感じられない”と批判することが

よくあるが、挑戦によるリスクを背負うのはメーカーのみである。特に現在の

日本のゲーム業界は、そのリスクが深刻な事態を引き起こしやすい状況に

あるので、メーカーも辛いところなのだろう。挑戦したくてもできないメーカーと

知ってか知らずか言いたい放題のユーザー。なんとも痛々しい図式である。

 

 

2003年 2月 7日

2005年 8月18日訂正