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「ザ・キング・オブ・シカゴ」

Media :PC98
Maker :CINEMAWARE(開発)
ボーステック(国内販売)
種 別:マルチシナリオ・アドベンチャー(?)
発売日:1990〜91(?)年

 今から約10年ほど前に販売されていたパソコン用アドベンチャーゲーム。
原作は、CINEMAWAREという米国の会社で、日本語化し、国内で販売したのは「
レリクス」のボーステック、最近では「オウガバトル」のクエストとブランド
名を変更しているところである。

 ストーリーとしては、1930年代中ごろのアメリカ、シカゴを舞台にしたギャ
ング抗争もの。
アル・カポネがアルカトラズ刑務所に送られた後、カポネ亡き後のシカゴの覇
権を巡ってマフィア達がしのぎを削る。
プレイヤーは、「北の連中」(シカゴの北部分をシマにしている小規模マフィ
ア)の野望を胸に秘める若きギャング、ピンキーとなって、シカゴ制覇を夢見
る・・・。

 と、ストーリーそのものは、それほど珍しくはないが、このゲームの凄さは
そのシステムにある。
そもそもアドベンチャーゲームとはいっても、プレイヤーは直接コマンドを駆
使してピンキーの動作全てを操れるわけではなく、シチュエーションに応じて
ピンキーが考えたこと(2選から3択)を選ぶだけである。
このシステムは後に流行するサウンドノベルに非常に近いものがあるが、キン
グ・オブ・シカゴの場合、選択肢決定までの時間制限があり、その間に決定し
ないとピンキー自身がやりたいことを勝手に選択してゲームが進んでいってし
まう。
 その為、このゲームにはアドベンチャーゲームでありながらポーズ機能があ
り、ポーズ中は画面に映画館のスクリーンに使われているような幕がおろされ、
そこには、アメコミ調の可愛いんだか怖いんだかいまいち判然としない、コー
ラの紙コップとフライドポテトのイラストが踊る。

 つまり、このゲームは「参加できる映画」というコンセプトで開発されたゲ
ームなのだ。


 ゲームの進行は、一ヶ月ごとに1シーンづつ進んでいくが、その時に自分が
マフィアのボスになっていれば、顧問や幹部に支払う給料の額からボディガー
ドの為の手下の人数、そして愛人への手当てまで全て変更することが出来、こ
の状態によっても、シナリオが変化する。
具体的には、愛人への手当てを減らせば愛人は不平をいうようになるし、手下
の数が少ないと相手のヒットマンに殺される確立が増す。
幹部への給料を減らせば、彼らの忠誠心が揺らぐといった具合に、シミュレー
ション的な要素も兼ね備えているのだ。

 その上、敵のシマへの襲撃時には、その操作性の悪さからかなりの難易度を
誇るミニゲーム(?)が挿入され、それに失敗するといきなりゲームオーバー
ということもある。

 このゲームは、給料配当などのシミュレーション要素、選択肢の結果、ミニ
ゲームの結果、そしてランダム要素が絡み合い、何度プレイしても同じ展開で
ゲームが進むことはない。
その組み合わせはマニュアルによれば1億通り以上で、かなり長く遊べるゲー
ムである。


 流れとしては、まず小規模マフィア組織の構成員に過ぎないピンキーがその
組織を自分のものにするところから始まる。
その方法も、車にのっているボスの「じいさん」を銃で暗殺する、手下を抱き
こみクーデターを起こす、「じいさん」本人を脅迫して引退を迫るなど、多岐
に渡る。
もちろん、ここで失敗すればそれまでだが運よく自分の組織をもつことが出来
れば、次は組織拡大を目指して敵組織の領地を侵食している、いきなり爆弾を
片手に攻め込んでもいいし、市長候補を抱きこんで、彼に市長の椅子を買って
やることで勢力を拡大する、という方法もある。
そして、最終的にはシカゴ全土を手中に収めるのだ。

 このゲームの魅力の一つはやはり個性的な登場人物で、いかにもギャング映
画出てきそうなアクの強い連中が多い。

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ピンキー・キャラハン 主人公。野望を胸に秘める若きマフィア。

じいさん       ピンキーが属する組織のボス。
           年齢的なことから引退を考えているが、甘く見ると痛
           い目を見る。

ベン         ピンキーが属する組織の顧問。
           利にさといが切れる男で組織を乗っ取る時は元より、
           その後も彼には注意を払わなければならない。

ブル         ピンキーと同じ組織に属する幹部、猪突猛進型の愛す
           べきタフガイ。

覗き屋        ピンキーと同じ組織に即する幹部、小心者で少々卑怯
           者、キャラ的には「ちびまる子ちゃん」の藤木を彷彿
           とさせるが、外見は何故かどう見てもアドルフ・ヒト
           ラー。

愛人         ピンキーの愛人、絶世の美女・・・かと思いきや、往
           年のプロレスラー、ダスティ・ローデスが女装したか
           と思うような肥満女性、別名「遊星からの物体X」
           あれを買えの、これを買えのと色々うるさいが、あま
           りぞんざいに扱うと敵組織と通じる恐れがある。
           とはいっても、まず最初に彼女への「お手当て」を大
           幅に削り、手下を雇うことが組織拡大への第一歩。

ママ         ピンキーの母親、出世しようが、殺されようが最後ま
           でピンキーの生き方を嘆きっぱなしという、ゲーム中
           唯一の普通の人。

キッド        マフィアに憧れ、ピンキーを慕う少年、意外と重要な
           キーパーソン。

サンツッチ      ピンキーのライバル組織のボス、彼を倒せばゲームク
           リア、ちょっと名古屋 章に似ている。
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 また、「野良犬みたいに死んじまいな」というような、完全に英語直訳の台
詞まわしが、逆にこのゲームの雰囲気を盛り上げていることや、月が変わるご
とに、画面にタイトルと、「1932年12月 クリスマスに欲しいのは、この街だ。」
や、「193X年X月 カポネがいっちまって ネズミ共が騒ぎ始めた」といったそ
の月、またはその状況に合わせたメッセージが表示されるといった演出がこの
ゲームの特異な魅力をより高めている。


 少なくとも日本のゲームでこれに類似するシステムものものはひとつもない
し、現在入手が難しいことからも、サバッシュ2と並ぶ幻の逸品であることは
間違いないのだ。



AXL 2001

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